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  vサインのボルソナーロ氏とミシェーリ夫人

ブラジルの大統領選挙で当選した、ジャイール・ボルソナーロ氏は
ブラジルのトランプ氏でもなく、極右呼ばわれされる筋合いの政治家でもない。
筆者がボルソナーロ氏を見て感じるのは 同氏が政治家には珍しく、思う事をずけずけと発言をする人物である事ぐらいで、彼が極右と言われる理由があるとすれば、軍独裁政府当時の軍隊の若い兵士で、同じ軍人でありながら、反軍事独裁政府のゲリラ活動家になり、ゲリラ達に射撃を教えていた、ラマルカ元大尉達のゲリラ狩り部隊の兵士であった事が、尾を引いているのだと思う。

ボルソナーロ氏は1956年生まれで、ラマルカ元大尉は1971年にバイーア州で射殺されており、ボルソナーロ氏の当時の年齢は15歳でまだ軍に入っていなかった。その後、17歳で軍の学校に入学しているが、
”O Que É Isso, Companheiro?”という、1997年に公開された映画で有名になった、反政府ゲリラの米国領事誘拐事件が発生した1978年当時もまだ22歳で、将校であったのかどうかも定かではなく、その後に将校に昇進したとしても、1983年には軍政から民政府への大政奉還が行われており、彼がゲリラ達を拷問していたという大量のフェークニュースが、選挙が終わった後でもまだ飛び交っており、それを信じる人達が居るのが現実だ。筆者の連れもボルソナーロ嫌いで、何故嫌いなのかと聞けば、彼の顔がヒットラーに似ているのが理由だと言っている。

ボルソナーロ氏がナチストだという人達も多いが、グローボ放送が選挙の終わった日に放映した、ボルソナーロ氏の家系に関した説明によれば、元々はボルソナーロ氏は曾祖父の時代(1880年頃)にブラジルに移民したイタリア移民の子孫で、その親戚の中にドイツ系の移民と結婚した人達がいるだけの話で、何故彼がナチストと呼ばれているのか、残念ながら筆者はその理由がよくわかっていない。

筆者はボロソナーロ新政府が、ブラジルを変革して行く事であろう事を、大きく信頼している。
そのためには 景気を回復させる事が第1義であり、景気の回復によって租税収入を増加させ、支出しなくてはならない事が多いが、財政を立て直し、公共投資を進展させなくてはならない。お金の無い政府は、お金の無い家庭と同じ事で、家族になにもしてやれないように、国民になにもしてやれないだろう。

彼はジウマ・フセッフ前大統領の罷免審議の中で、軍政時代にcoi・godoiと呼ばれた秘密警察の責任者で、捕獲されたゲリラの取り調べで拷問を行うように指令した罪で、その後に有罪判決を受けたオストラ元大佐の名誉のために、フセッフ大統領の罷免に賛成すると発言し、その発言によって、彼自身が議員罷免審議にかけられる寸前まで行った事もあった。
しかし、ジウマ大統領の罷免審議が行われる1年程前に、そのオストラ元大佐自身は、その高齢によって他界している事と、フセッフ元大統領が元反軍政府ゲリラで、捕えられ拷問を受けた事を再三に渡って言及し、労働党の宣伝に使っている可能性に、ボロソナーロ氏が反感を抱いていたものと、筆者は考えている。

以上のように、ボルソナーロ次期大統領は言葉を濁さない、日本で言えば、橋本徹氏のような存在で、富豪あがりのトランプ大統領とは出生の環境が異なるが、トランプ氏が米国を強くする事に注力しているように、ボリソナーロ氏もブラジルを強くするために注力すると思う。
 また、ブラジルの政界を変革する事ができるポテンシャルを秘めた人物だと思う。彼の所属するPSL党が拡張し、これまでのPSDBやMDB、労働党に取り替わる新たな政治勢力を構成し、2022年の選挙で再選できなくても、彼に代わる新たな’世代の政治家がブラジルを引っ張って行く事になると、筆者は考えている。